KEMA Column | 髪の知識
髪の毛のすべて — 構造・ダメージ・ケアの完全ガイド
毎日洗って、乾かして、結んで——いちばん身近なのに、「髪の毛って、そもそも何でできているの?」「なぜ傷むの?」と聞かれると、案外うまく答えられないものです。この記事は、髪のしくみから、傷みの原因、そして毎日のケアまでを一本でたどる“完全ガイド”。読み終わるころには、いつものケアの一つひとつに、ちゃんと理由が見えてくるはずです。
この記事の流れ
- 髪とは何か(しくみ・三層構造・頭皮)
- 髪はなぜ傷むのか(4つの要因と進行の段階)
- では、どうケアするか(守る・補う・整える)
PART 1 ── 髪とは何か
じつは髪は「もう生きていない」
少し意外かもしれませんが、私たちが手にふれている髪の毛は、すでに生きた細胞ではありません。生きているのは、頭皮の中にある「毛根(もうこん)」の部分だけ。ここで新しい細胞がつくられ、上へ上へと押し出されながら固まって、目に見える髪になります。つまり、爪の表面と同じように、髪の見えている部分は“育ち終えた”組織なのです。
だからこそ、髪は自分で傷を治すことができません。肌なら時間がたてば再生しますが、一度傷んだ髪はもとには戻らない。これがヘアケアの大前提です。「治す」のではなく、これ以上傷ませない・今ある状態を守って整える——ケアの本当の役割は、ここにあります。この前提を頭の片隅に置きながら、まずは髪のつくりを見ていきましょう。
髪は「三層構造」でできている
髪の毛を一本、思いきり拡大すると、まるで一本の鉛筆のような三層のつくりが見えてきます。いちばん外側のうろこ状の膜がキューティクル、その内側のたっぷりした層がコルテックス、そして中心の芯がメデュラ。それぞれに役割があり、ツヤやまとまり、手ざわりは、この三層の状態で決まります。
キューティクル=髪を守る「うろこ」
いちばん外側のキューティクルは、屋根瓦のように何枚も重なって髪の表面を覆っています。役割は、内部の水分や栄養を閉じ込め、外からの刺激を防ぐ“バリア”。このうろこがきれいに閉じてそろっていると、光をなめらかに反射して、あの「ツヤ」が生まれます。反対に、うろこがめくれて開くと、光は乱反射してパサついて見え、中身も流れ出てしまいます。
そしてキューティクルが最も無防備になるのが、髪が濡れているときです。水を含むとうろこは開き、こすれや摩擦にとても弱くなります。濡れた髪をゴシゴシ拭いたり、そのまま寝てしまったりすると傷つきやすいのはこのため。「濡れた髪はそっと扱う」という基本には、ちゃんと理由があったのです。
コルテックス=髪の「中身」と個性
うろこの内側にあるコルテックスは、髪全体の約8〜9割を占める、いわば本体です。ここはタンパク質(ケラチン)の繊維と水分でできていて、髪のハリ・コシ・弾力、そしてうねりやクセ、髪色までもがこの層で決まります。髪の「その人らしさ」は、ほとんどがコルテックスに宿っているのです。カラーやパーマ、強い熱でこの層が傷むと、髪はパサつき、まとまらなくなります。だから、表面を整えるだけでなく内側を補うケアが大切になります。
見落とされがちな主役、「頭皮」という畑
髪そのものに目が向きがちですが、その髪を生み出しているのは頭皮です。頭皮は、髪にとっての“畑”のようなもの。土がやせていれば良い作物が育たないように、頭皮の環境が乱れると、これから生えてくる髪の元気も損なわれてしまいます。健康な髪は、健康な頭皮からしか生まれません。
頭皮は皮膚の一部なので、汗や皮脂、乾燥、紫外線の影響を受けます。毛穴に皮脂が詰まったり、逆に乾燥してかたくなったりすると、髪の育つ土台がゆらぎます。韓国のヘアケアがシャンプーだけでなく、頭皮用のトニックや美容液まで使って“土づくり”を大切にするのは、ここに理由があります。指の腹でやさしくマッサージするだけでも、頭皮はうれしいケアになります。
PART 2 ── 髪は、なぜ傷むのか
「ダメージ」とは、何が起きている状態?
髪のつくりがわかると、「傷み」の正体も見えてきます。ヘアダメージとは、ひとことで言えば「髪の構造が乱れ、内部の成分が失われていく」状態です。健康な髪はキューティクルがぴたりと閉じて中身を守り、コルテックスがタンパク質と水分をしっかり抱えています。ダメージとは、この均衡が崩れること。キューティクルがめくれて閉じなくなり、そこから水分やタンパク質、脂質が逃げ、中身がやせて空洞ができる——傷みは「表面の問題」ではなく、表面の防御が破れた結果、内部が流出していく連鎖反応なのです。では、その“要因”はどこにあるのでしょう。大きく4つあります。
要因 ①
摩擦という、“物理”の力
もっとも見落とされやすいのが、日々の摩擦です。ブラッシング、タオルドライ、枕とのこすれ、髪同士の絡まり——どれも小さな力ですが、毎日くり返されることで、キューティクルの先端を少しずつ削っていきます。とくに濡れた髪は無防備。タオルは「こすらず、押さえて」水分を取り、ブラッシングは目の粗いもので毛先からほぐす。洗い流さないケアで表面に膜をつくれば、摩擦はぐっとやわらぎます。
要因 ②
熱が、タンパク質を変える
ドライヤーやヘアアイロンの熱は、スタイリングの強い味方であると同時に、扱い方を誤るとダメージの大きな原因になります。髪の主成分であるタンパク質は、高い熱を受けると性質が変わる「熱変性」を起こします。卵の白身が加熱で固まって元に戻らないのと同じで、変性したタンパク質はもとには戻りません。過度な加熱は髪の内部に空洞をつくり、弾力やうるおいを奪います。
ここで知ってほしいのが、KEMAが大切にしてきた「湿熱(しつねつ)」の考え方です。いちばんわかりやすいのはストレートアイロン。アイロンは「熱」で髪を整えますが、カラカラに乾いた髪へ高温を当てれば、残った水分まで奪われ、キューティクルは傷みます。反対に、適度な水分を含んだ髪にちょうどよい熱を加えると、髪はなめらかに整い、ツヤが生まれる。つまり髪を美しくするのは熱そのものではなく、水分と熱の均衡なのです。アイロンの前にアウトバスでうるおいを補う、温度を上げすぎない、同じ場所に長く当てない——熱を“敵”ではなく“味方”にするコツです。
要因 ③
カラー・パーマという、“化学”の力
ヘアカラーやブリーチ、パーマは、髪の内部に薬剤を作用させて色や形を変える施術です。美しい変化が得られる一方で、構造そのものに手を入れるため、ダメージとしては最も大きくなりやすい要因です。ブリーチは色素を分解する過程でタンパク質の結びつきもゆるめ、パーマは髪の形を保つ結合を一度切って結び直す。いずれも施術後の髪はデリケートに傾きます。
大切なのは、施術を避けることではなく、その後のケアを設計することです。化学処理を受けた髪は内部のタンパク質や水分が不足しがち。表面を整えるだけでなく、内側を補う発想が欠かせません。KEMAが採用する先進のリポソーム技術は、補修成分を髪の奥深くまで届けることを目指したもの。カラーやパーマを楽しむ人ほど、内部補修を前提にした日々のケアが、美しさを長持ちさせます。
要因 ④
紫外線・乾燥・酸化という、“環境”の力
意外と無防備なのが、日々さらされている環境です。肌に日焼け止めは塗っても、髪と頭皮はそのまま、という人は少なくありません。紫外線は髪表面のタンパク質や脂質、髪色の色素にダメージを与え、パサつきや色あせを招きます。乾燥した空気は髪の水分を奪い、汗や皮脂の酸化はにおいやごわつきの原因に。屋外で過ごす日は、帽子で物理的に守り、出かける前にアウトバスでうるおいの膜をつくる。一日の終わりには、酸化した汗や皮脂をその日のうちにリセットする。環境ダメージは“予防”が何よりの近道です。
ダメージは、こう進む — キューティクル劣化の4段階
4つの要因から入ったダメージは、いきなり枝毛になるわけではありません。多くの場合、キューティクルの状態が段階的に変化していきます。下の図は、その進み方をイメージにしたものです。
段階①〜②のうちは、アウトバスケアや摩擦対策でつやを保ちやすい時期。けれど③〜④まで進むと、削れたキューティクルからコルテックスがむき出しになり、引っかかりや切れ毛、枝毛として表面化します。ここまで来た毛先は、残念ながら元の構造には戻せません。だからこそ、早い段階で気づき、それ以上進ませないことが大切なのです。
知っておきたい、「濡れ乾き」の疲労
もうひとつ、見落とされがちな現象があります。髪は濡れると水を吸ってふくらみ、乾くと縮む——この膨潤と収縮を毎日くり返すと、ゴムを伸び縮みさせ続けると傷むように、髪も少しずつ疲れていきます。これは「ハイグラルファティーグ(湿潤疲労)」とも呼ばれる考え方です。
洗ったあとに濡れたまま長時間放置したり、しっかり乾かさずに過ごしたりすると、膨らんだ状態が続いて負担が増えます。「洗ったらきちんと乾かす」「濡れた髪を長く放置しない」——地味ですが、これも立派なダメージ対策です。
髪は生まれ変わる。でも、傷は“治らない”
少し安心できる話を。髪は一本一本が「生える→伸びる→抜ける→また生える」というサイクル(ヘアサイクル)を、それぞれのペースでくり返しています。一日に数十本の髪が自然に抜けるのは、この生まれ変わりの一部。抜け毛をすべて心配する必要はありません。
一方で、すでに生えている髪そのものには、傷を自分で治す力はありません。だからケアにできるのは、大きく二つ。これ以上傷ませない「予防」と、失われた成分を補い、開いたキューティクルを整えて見た目と手触りを取り戻す「補修」です。新しく生えてくる髪のために頭皮を整え、今ある髪はやさしく守る。この両輪が、美しい髪を育てます。
PART 3 ── では、どうケアするか
KEMA流・髪とのつき合い方 — 守る・補う・整える
ここまでのしくみを知ると、やるべきことはとてもシンプルになります。守る——摩擦をやわらげ、熱と紫外線から髪を覆う。補う——カラーや熱で失われた成分を、内側から補修する。整える——水分と熱の均衡(湿熱)を意識して、つやのある状態に仕上げる。この三つは、KEMAが掲げる秩序・均衡・調和という哲学そのものです。
具体的には、洗ったあとは濡れた髪をやさしく扱い、アウトバスでうるおいの膜をつくってから、乾かしすぎない温度で手早く乾かす。アイロンを使う日は、必ず水分と熱のバランスを意識する。頭皮は“畑”として日々整え、毛先には内部補修を前提としたオイルやバームを習慣に。難しいことは何もありません。しくみを知ったうえでの小さな選択の積み重ねが、一年後の髪を確かに変えていきます。髪のことを知ったあなたの毎日のケアは、きっと少しだけ、ていねいで愛おしいものになるはずです。